ネオンが綺麗に輝く夜と成りました。
僕は、一つの山を越えて今日はこのまま平和に終わるのだろうな~
って思いながら仕事をしていました。
お客さんの相手をしてる最中に入り口の辺りが騒がしくなりました。
お客さんが次々と不思議そうな顔をして見学に走って行きます。
僕のテーブルの人がいなくなったので僕も野次馬根性で行こうとしたとき
「カツミ~」
急に呼ばれて振り返ると・・・・・・あれ?
そう、呼ばれた方からは誰もいなかったのです。
「仕事しろ~」
今度は後ろから・・・・振り返るとタツミ先輩の姿が目の前に現れて僕は思わず腰が抜けました。
「失礼だな~」
そう言って タツミ先輩は僕に手を差し伸べてくれました。
僕はその手を使って立ち上がると
「カツミ・・・・あいつ見た?」
「あいつ???」
「そ、あいつ~」
あいつ?あいつ??あいつ??????
僕は考えては考えるが誰のことなのか??
「やっぱり見てないのか~」
「あの~誰のことなのか???」
僕はおそるおそる聞くのですが、聞く耳を持ってくれません。
タツミ先輩「あ~だこ~だ」とぶつぶつ言いながら去って行きました。
今回は煙草を貰ってない!と思いきや何故か胸ポケットに入ってました。
ちゃっかりしてますね。
僕は、あの人ごみの中に入ろうかと行こうとすると何故か人ごみは僕の方にまっすぐこちらに向かっていた。
僕はちょっと不思議に思いながら後ろを振り返るが・・・・
誰もその方向にはいないし~。
僕はどうしていいのかわからずそのまま立っていた。
「いいかな?」
「え、はい。」
人ごみを作った本人なのだろう。その人が僕のテーブルへとやって着た。
うわ~僕の周りにも人の壁が出来る。
冷静に冷静に~と思いながらふと見るとチップの色がいつもと違う。
いつも使っているいるチップは赤、緑、あと黒位でこの人が出したのは・・・・
黄色?って黄色???
「おや、ここではレートが違ったかね?」
「え!」
僕はちょっと焦った。
「ちょ、ちょっとお待ち下さい。」
僕は、とりあえずタツミ先輩がモニター室にいるだろうって思って走った。
モニター室に行くと・・・・・あれ?
誰もいない。
ど、どうしよう・・・・・。
ふと画面を見ると先輩が僕の変わりにテーブルにいた。
「せ、先輩?」
僕はまた慌ててそのテーブルに走った。
もう僕の息は上がっていた。
先輩の駆け寄ろうにもいつの間にか人の壁で割って入れるほど体力がない。
深呼吸をしてやっと人の壁を割って先輩の近くに来た。
そのテーブルには見たことの無い黄色のチップの山が・・・・。
男が指を三本出せばスーツケースからチップの山を落とす。
それも三つも・・・。
僕は先輩の顔を・・・横顔だけど見ると目はまっすぐに少し微笑んでいるように見える。
先輩はテキパキとカードを配りそして勝って行く。
僕はとりあえずチップを回収したりと補佐をした。
何時間がたっただろうか?人々が少しずつ遠巻きにこの試合を観察するようになっていた。
先輩の額から少し汗が流れる。
「失礼」と短く告げ先輩は額の汗をハンカチで拭く。
こんな光景見たこと無いな~。
一体あと何時間くらいでこの試合は終わるのだろうか。
僕は不安になっていた。
「交代して貰っても構わないが?」
男はそういう。
確かに誰かに代わって貰った方がいいのだろうけど・・・。
「お願いしてもいいですか?」
「なんだね?」
「これが最後の試合にしませんか?」
「ほ~、最後とは?」
「その名の通りです。」
先輩は口調は営業用だけど目はちょっと恐い感じが見て取れます。
少しの沈黙の後男は「いいだろう」と答えた。
その言葉を遠くから聞いていた人たちがまた壁を作り出した。
僕も先輩が勝つことを祈りながら勝負の行方を見つめていた。
緊張がこっちに伝わってくる。
・・・・・・?
先輩の顔からして緊張には見えなかった。
先輩は少し楽しそうな顔をしていたからだ。
男の顔も・・・・。
この緊張は人の壁を作っている人達?
先輩達は、その緊張を楽しんでいるようにさえ見える。
相手の手は、21になった。
先輩の手はどうなるんだろう。
先輩の手にきっと皆注目しているのだろう。
それが分かっているのかちょっと勿体つけるようにカードを捲る。
9・・・・そして、12・・・・・最後の一枚になるのでは?と思い皆注目する。
・・・・・・・・15。
皆のため息が、これが最後になるんだ。
心臓の音が耳障りに聞こえる。
先輩は、男の顔をまっすぐに見ながらカードを捲った。
21!!
「はぁ~」「ふぅ~」と人々から歓待ともため息とも取れる息が漏れる。
男は、拍手をして握手を求める。
しかし先輩はお辞儀をして
「有難う御座いました。」
と告げた。
男は、差し出した手を少し見つめ引っ込めると手で後ろにいた男達に帰る合図だろうか?をしてカジノを後にした。
僕は、その様子をボーと眺めていた。
「お、お前煙草吸うようになったのか?」
先輩の言葉に「え?」と問いかけようと振り返るときに胸ポケットにあったタツミ先輩がくれた煙草を取り上げて
「なんだ、タツミの奴か~、まあいいか~」
って言って先輩は、煙草を咥えて火を点けた。
僕の趣味(?)になりつつあったタツミ先輩の煙草集めに一つ欠陥が出た瞬間でした。
長い長い夜は朝日と共に終わりを告げた。
コメント