第三の殺人 理性。

気付けば、辺りが騒々しかった。
俺は、目をこすりながら起き上がった。
ドアを開けて居る筈の同僚に声をかけようと思ったのだが、
居る筈の同僚の姿はおろか殆ど一人見当たらない。
皆で飲みにでも行ったのか?仕事をほっぽって?
やりそうな奴はいるが・・・・


頭を掻きながら、隣にあるトイレに向かうべく廊下に出ると
自分の目を疑った。
辺り一面が血・・・・・また、血・・・・
「おい、」
抱き起こした同僚は、力なく手から零れ落ちる。
「うぁぁぁあ」
自分で何を言ってるのか分からないくらいに震えていた。
蛍光灯がチラついていた。


その蛍光灯に反射した何か・・・・。
・・・・・・・・・包丁!!!!!
気付いて逃げ出そうとした瞬間何か得体の知れない気分になった。
か、身体が動かない。
自分の目の前に、警察になりかけの姿がちらついた。
おばあさんやおじいさんを案内してあげたり。
警部補に任命された時、殉職した先輩。
ああ、これがよく言われる死の直前に見る奴か・・・・。

警察署を後にしたオレの目の前で車が止まった。
高級車らしい車だ。
そこから降りてきた男達がオレの周りを囲み
「お待ちしておりました。」
!!!?
な、何を言っているのかが分からない。
そのとき背中に電流が走った。
「少し乱暴なことをお許しください。」

気付けば、石で出来たような天井が見える。
まだ、手足に痺れを感じて動けない。
「あ、気付きましたか?」
近付いてきた男は、あの時車を降りて話していた奴だ。
手に持っていた筈の包丁を探していた。


「?あ~凶器は、預からせて頂きました。」
・・・絶望だ。いや、凶器を取られない方がおかしいのだが・・。
少し動けるようになった手で勢いをつけて起き上がる。


クラ~と来たが、男に掴みかかる。
「うわぁぁぁっぁ」
男の悲鳴が聞こえる。
掴みかかっている男の声ではない。


振り返れば、ナイフを持った男とくくりつけられている男が
それぞれに叫んでいた。
「嫌だぁぁぁぁ死にたくない」
「あ、あ、うぁぁぁ」
掴んでいた手が少し緩んだ。
男は、その隙を突いてかオレの手を振り払い
服を正してオレにこう言った。


「貴方にもあれと同じことをして貰います。」
言葉の意味は理解しがたいがどうやら、殺し合いのようだ。
理性を持った男が理性を捨てるところのようだ。


オレにもして貰うって事は、オレはどっちの役なんだ?
その光景は、傍から見ていても気に食わない。
オレは、自由になった身体でナイフを持った男の手を取り
「殺せないなら殺してあげるよ。」
呟くように言ったのでその男は、ビックリしたような顔で
オレを見た。
ザシューーーーーーー
血しぶきが上がった。
首を切ったためだ。


殺される筈だった男は、その血を見て呆然としていた。
オレはそいつの首も切った。
辺りは、血しぶきで天井から壁と真っ赤になった。

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